ガンドリル加工を最適化する切削油の役割と選定ポイント

ガンドリル加工において、切削油は作業の精度と効率に直結する重要な要素です。適切な切削油を選び、効果的に活用することで、工具の寿命を延ばし、高品質な加工結果を得ることが可能になります。本記事では、ガンドリル加工における切削油の役割や種類、そして選定や管理のポイントをわかりやすく解説します。

ガンドリル加工で使われる切削油の目的

切削油の目的① 冷却

ガンドリル加工における切削油の重要な役割の一つが「冷却」です。特にガンドリル加工は、高速で深い穴を正確に加工するため、切削中に工具と材料が非常に高温になる傾向があります。この高温は、工具の寿命を短くし、材料の品質にも悪影響を及ぼすことがあるため、冷却は加工の成功に欠かせない要素です。

切削油は、工具と加工面の間に効果的に供給されることで、熱を逃がし、適切な温度を保つ役割を果たします。適切に冷却が行われないと、熱膨張により穴の寸法が変わることや、工具が早期に摩耗することが起こり得ます。特に深穴加工では、工具が切りくずを効率よく排出できるよう、切削油による冷却が不可欠です。

冷却が不十分だと起こりうる問題

冷却が不十分だと「焼き付き」が発生し、工具が材料に固着するリスクも増加します。この焼き付きは、工具の摩耗を急速に進行させるだけでなく、材料の表面にも深刻な損傷を与えるため、加工の質に大きく影響します。冷却の効果が適切に発揮されることで、工具と材料の摩擦が軽減され、スムーズな切削が可能になります。さらに、温度管理が適切に行われることで、材料の物理特性にも影響が出る場合があります。例えば、特定の材料は高温にさらされると硬化や脆化が進み、加工が困難になることがあります。切削油による冷却はこうした問題を防ぎ、加工中の材料の安定性を確保する助けとなります。

切削油の目的② 潤滑

切削油における潤滑の目的は、切削工具とワークピースの間に潤滑膜を形成し、摩擦を軽減することです。ガンドリル加工のように、工具が高速で回転し、深い穴を精密に加工する場合、摩擦熱や加工抵抗が非常に大きくなります。これにより、工具の摩耗が促進され、加工面の品質が悪化する可能性があります。潤滑は、これらの問題を解消し、加工の安定性を保つために不可欠な要素です。

潤滑作用により、切削刃がワークピースに食い込みすぎるのを防ぎ、スムーズに切削が行われます。摩擦を低減することで、切削抵抗が小さくなり、工具が長寿命化するだけでなく、切削中に発生する熱も軽減されます。これにより、加工中に工具が高温になることを防ぎ、工具が摩耗しにくくなります。

潤滑が不十分だと起こりうる問題

潤滑は工具だけでなく、ワークピース自体をも保護します。高摩擦によってワークピースに過度な熱や応力がかかると、材料にひび割れや変形が生じる可能性があります。潤滑油が適切に機能することで、加工中にワークピースの品質を維持し、材料表面の仕上げ精度を高める効果も期待できます。潤滑は単に摩擦を減らすだけでなく、加工全体の効率性、工具寿命、ワークピースの仕上がりを左右する重要な役割を担っています。

切削油の目的③ 洗浄

ガンドリル加工における切削油の「洗浄」機能は、加工品質を維持するために非常に重要です。特に深穴加工では、切削中に発生する細かな切りくずや微細な粉塵が狭い加工穴の内部に溜まると、工具の動きが妨げられ、加工面に傷がついたり、加工精度が低下したりする可能性があります。そのため、切削油は単なる潤滑や冷却だけでなく、切りくずを効率よく除去する役割を果たしています。

切削油が適切に供給されると、加工中に発生する切りくずを油流が連続的に排出し、加工部分を常に清潔に保ちます。特にガンドリルのような深い穴を加工する場合、切りくずが積み重なって詰まると、工具に負荷がかかり、最悪の場合、工具の破損や加工物自体の損傷に繋がることがあります。適切な油圧で切削油を供給することで、切りくずを加工穴の外部に迅速に排出し、加工の連続性と安全性が確保されます。

切削油が持つ洗浄効果

切削油が持つ洗浄効果により、切りくずが加工面に再付着することを防ぎ、加工面の仕上がりを美しく保つことができます。これにより、最終製品の表面品質が向上し、追加の仕上げ作業を減少させる効果も得られます。加工工程が進むにつれ、細かな切りくずや粉塵が切削油中に溶け込むため、定期的な油の濾過や交換も重要です。これにより、切削油の洗浄効果を常に最大限に保つことができ、加工の品質が安定します。

ガンドリル加工で使われる切削油の種類

水溶性切削油

不水溶性切削油

環境・健康への影響

ガンドリル加工における切削油の使用は、作業効率や精度を高めるために不可欠ですが、その一方で、環境や作業者の健康に対する影響も慎重に考慮する必要があります。特に、長期間の使用や高頻度での作業においては、切削油が空気中に飛散したり、機械から漏れ出したりすることがあり、これが健康や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

慢性呼吸器疾患や皮膚炎発症の可能性

切削油は加工時に微細なミストや煙として空気中に放出されることがあり、作業者がこれを吸い込むことで呼吸器系に問題を引き起こすリスクがあります。長時間にわたって切削油のミストにさらされると、慢性の呼吸器疾患や皮膚炎を発症する可能性が高まります。特に不水溶性の切削油には、油分が高く含まれており、これが揮発して作業環境に広がると、健康リスクがさらに増加します。そのため、換気の良い作業環境や、ミストを吸収する適切な換気装置の設置が求められます。また、作業者には個人用保護具（PPE）の着用を徹底することが重要です。

土壌汚染の原因

環境への影響について考えると、切削油の適切な処理が非常に重要です。使用済みの切削油には、金属片や不純物、加工中に生成された有害な物質が含まれていることがあり、これが環境に流出すると水質汚染や土壌汚染の原因となります。不適切な処理によってこれらの有害物質が外部に流出すると、生態系に深刻なダメージを与える可能性があるため、切削油の廃棄方法には特別な配慮が必要です。切削油の再利用やリサイクルを行うことで、環境負荷を軽減する取り組みも進んでいますが、依然として安全な廃棄プロセスの確立が不可欠です。

切削油の定期的なメンテナンス

切削油には化学添加剤が含まれていることが多く、これが経年劣化することで環境や健康に有害な物質に変質することもあります。例えば、防錆剤や潤滑剤として添加された化学物質が酸化したり、分解したりすることで、毒性が高まることがあります。このため、切削油の定期的なメンテナンスや交換を行い、劣化した油の使用を避けることが、作業環境と作業者の健康を守るために必要です。

ガンドリルやBTAなら不二新製作所におまかせ

ガンドリル加工やBTA加工についてのお問い合わせは、お電話か下記のメールフォームよりお願いします。ガンドリル加工やBTA加工の材料となる金属材の手配から、ガンドリル加工やBTA加工まで一貫生産をより高品質・短納期で金属加工ができる仕組みを確立しています。他社で「できない」と断られた難しいとされている金属加工（ガンドリル・BTAなどの深穴加工や細穴加工）もぜひご相談ください！お問い合わせは、お電話か下記のメールフォームよりお願いします。

その他金属加工全般についての記事

金属加工コラム

金属加工は数千年の歴史があります。諸説ありますが、太古の金発掘が金属加工の始まりといわれています。飛行機や船といった大掛かりの金属加工や、銅像や車などといった中程度の金属加工、スマホやお金の硬化といった金属加工とさまざまなシーンで使われています。 金属加工コラム

関連法人のご紹介

株式会社 無双

溶接のことなら 株式会社 無双 におまかせください！ステンレス・アルミから、鋳物・チタン等の特殊金属まで、金属溶接・機械加工を高品質・短納期で対応いたします。図面1枚で材料手配から完成まで一貫生産が可能！他社で断られた溶接もおまかせください。 株式会社 無双

2024/9/16 makita