アクリルのガンドリル深穴加工での注意点

最終更新 : 2026/7/27 監修 : 五十嵐 健人(営業管理部マネジャー)

アクリル素材でガンドリル加工

油圧機器の部品や、医療用の分析装置、半導体製造装置など、現代のモノづくりにおいて長くて真っ直ぐな深穴をあける技術は欠かせません。この深穴加工で最もよく使われているのがガンドリル加工です。

現場のノウハウを交えながら詳しくお伝えします。製品の設計を担当されているエンジニアの方や、加工の外注先を探している調達担当の方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

ガンドリル加工の基礎知識

ガンドリル加工とは、ひとことで言うと、細くて深い穴を、高精度にまっすぐあけるための専用の加工方法です。

小銃の銃身を作るために生まれた

ガンドリルという名前の通り、この技術はもともと19世紀に「小銃(ガン)」の銃身(バレル)を製造するために開発されました。弾を正確に飛ばすためには、鉄の棒に長くて真っ直ぐな穴をあける必要があります。しかし、当時の普通のドリルでは途中で曲がってしまったり、切りくずが詰まってドリルが折れたりして、うまく加工できませんでした。

そこで、「なんとかして真っ直ぐに、切りくずを詰まらせずに深い穴をあけられないか」と工夫を重ねて生まれたのが、ガンドリルの原型です。現在ではこの技術が進化し、自動車部品や医療機器など、精密なモノづくりに欠かせない技術になっています。

ガンドリルの独特構造

ガンドリルの見た目は、DIYなどで使う一般的なドリルとは全く異なります。主に次の3つの部分からできています。

先端の超硬合金刃

実際に材料を削る先端部分は、非常に硬い超硬合金で作られています。普通のドリルが左右対称の2枚刃なのに対し、ガンドリルは非対称の「1枚刃(シングルフルート)」になっているのが大きな特徴です。

V字型の溝を持つパイプ状の胴体(シャンク)

胴体部分は、丸いパイプの1/4ほどを切り取ったような「V字型」の溝があります。このV字の溝が、削り取られた切りくずの通り道(排出経路)になります。ドリルの中には小さな穴が通っており、ここから冷却液(クーラント)を高圧で噴射します。

機械とつなぐ根元部分(ドライバー)

工作機械に取り付ける部分です。機械から送られてくる高圧の冷却液を、漏らさずにドリルの内部へと送り込む役割を持っています。

ガンドリル加工の3つの大きな特徴・メリット

わざわざ専用の工具や機械を使ってガンドリル加工を行うのには、明確な理由があります。ここでは3つの大きなメリットをご紹介します。

圧倒的な深さを実現できる

穴あけ加工の世界では、穴の直径(D)に対してどれくらいの深さ(L)があるかを「L/D(エルマイナスディー)」という比率で表します。

普通のドリルでは、L/Dが5〜10(直径5mmなら深さ25〜50mm)くらいが安定してあけられる限界と言われています。しかし、ガンドリル加工ならL/D=50〜100、条件が合えば最大で300という、とてつもなく深い穴(超深穴)をあけることができます。

内面が鏡のようになめらかに仕上がる

ガンドリルの刃の側面には「ガイドパッド」と呼ばれる、少し出っ張った滑り止めのような部分があります。ドリルが回転して穴をあけていく際、このガイドパッドが穴の壁にギュッと押し付けられながら進みます。

このとき、壁面をこすって平らにならすバニシング作用という現象が起きます。これにより、穴の内面がツルツルになめらかに仕上がるため、後から内側を磨く工程(リーマ加工など)を省略できることが多いのも大きなメリットです。

まっすぐな穴をあける直進性の高さ

先ほどのガイドパッドが壁に密着して進むため、ドリル自身が自分であけた穴を「ガイド」にして直進していきます(自己案内効果)。そのため、深く掘り進めても穴が曲がりにくく、非常に高い真直度(真っ直ぐさ)を保つことができます。

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アクリルをガンドリル加工の難しさ

ガンドリルはもともと鉄やアルミなどの金属を削るための技術です。これを、透明で美しいけれどデリケートな「アクリル樹脂(PMMA)」に使う場合、金属加工とは全く違う難しさがあります。

アクリルの特性による2つの大きな壁

熱で溶けてしまうリスク

アクリルは熱に弱く、80℃〜100℃くらいで柔らかくなり始めます。ガンドリルで削る際に発生する「摩擦熱」をうまく逃がしてあげないと、切りくずがドリルの中でドロドロに溶けて固まってしまいます。これを「溶着」と呼びます。溶着が起きると、クーラントが出なくなり、最悪の場合はドリルが折れて製品の中に残ってしまいます。

見えないヒビが入る

アクリルは硬い反面、衝撃やストレスに弱く割れやすい素材です。ドリルの進むスピード(送り速度)が速すぎて無理な力がかかったり、金属加工用の油性クーラントの成分がアクリルと反応したりすると、加工中や加工後に細かいヒビ(クラック)が入ってしまいます。医療機器などの流路部品では、このクラックから液漏れしてしまうため致命的な不良となります。

アクリルのガンドリル加工のポイント

不二新では、上記のようなどうしても避けられないアクリルの弱点を克服するため、以下の5つのポイントを徹底して管理しています。

ポイント1:水溶性クーラントによる徹底管理

アクリルを溶かさない、そして油の成分でクラックを起こさせないために、金属用の油性切削油は使いません。冷却効果の高い「水溶性クーラント(水に溶かして使う液)」を使用します。さらに、液の温度が上がらないよう、チラー(冷却機)を使ってクーラントの温度を常に20℃前後に保つ環境を作っています。

ポイント2:プログラム制御によるペッキング

ガンドリルは「途中で抜かずに一気に掘る(ノンステップ)」のが基本とお伝えしましたが、アクリルの深穴に限っては例外です。熱がこもるのを防ぐため、あえて数ミリ進むごとにドリルを少しだけ後退させる「ペッキング(ステップ加工)」を取り入れます。

現場エンジニアの視点

プロのひと工夫

単純にドリルを抜き差しするだけでは、刃が底に当たる衝撃でアクリルが割れてしまうことがあります。当社では、特殊なプログラムを組み、「少し削ったら後退し、そこで0.5秒ほど停止(ドウェル)してクーラントでしっかり熱を冷ましてから、ゆっくり再スタートする」という細かな制御を行って割れを防いでいます。

ポイント3:切削条件の絶妙なバランス

アクリルを削る際は、「早く削ろうとしてドリルを押し込むスピード(送り量)を上げる」と割れてしまいます。逆に「慎重にやろうとして押し込むスピードを遅くしすぎる」と、同じ場所で刃が何度もこすれて摩擦熱が発生し、溶けてしまいます。
金属と比べると「回転数は少し高め、押し込むスピードは控えめ」という狭いストライクゾーンを見つけ出し、ドリルの太さに合わせて微調整することが職人の腕の見せ所です。

ポイント4:樹脂専用のドリル先端形状

市販のガンドリルは鉄を削るための形をしているので、そのままアクリルに使うと抵抗が大きすぎます。そこで、刃先を少し鋭く削り直す「シンニング」という加工を行い、アクリル専用の刃の形にカスタマイズします。刃を鋭く(切れ味を良く)することで、余計な摩擦熱を出さずにサクッと削れるようにしています。

ポイント5:素材の選び方

アクリルの材料には、作り方の違いによって「キャスト板」と「押出板」があります。深穴加工をする場合は、分子が詰まっていて熱に強い「キャスト板」を使っていただくことを強くおすすめしています。押出板は熱で溶けやすく、ガンドリル加工の難易度がさらに跳ね上がってしまいます。

アクリル深穴加工でよくある失敗と解決策

アクリルのガンドリル加工で起きやすいトラブルと、当社が行っている解決策をまとめました。

よくある不良症状 考えられる原因 現場の主対策
穴の奥で切りくずが溶ける 摩擦熱が逃げていない、切りくずがうまく外に出ていない クーラントの圧力を上げる、ペッキング幅を狭くして、熱を逃がす
貫通の瞬間に出口が欠ける 出口付近は壁が薄いため、ドリルの押し込む力に耐えられない 貫通の2mm手前で、ドリルスピードを極端に遅くする。
数日後に細かいヒビ 加工時のストレスが残っている 水溶性クーラントに切り替える。加工の前後に熱処理を行い製品のストレスを抜く

ガンドリル加工に関するよくある質問(FAQ)

アクリルのガンドリル加工後、穴の内側は透明になりますか?

ガンドリルで加工した直後は、刃の細かい跡が残るため、穴の内側は「すりガラス状(半透明)」になります。もし流体が流れる様子を見たいなどの理由で完全な透明さが求められる場合は、加工後に特別な薬品で処理したり、研磨したりする「二次処理」を行うことで透明に近づけることが可能です。

製品の中で、タテの穴とヨコの穴が交差するような形も加工できますか?

はい、可能です。ただしアクリルの場合、すでに開いている穴にドリルが突き抜ける瞬間に、バリが出たり割れたりしやすいという課題があります。どちらの穴を先にあけるかという順序の工夫や、突き抜ける瞬間のプログラム制御など、経験に基づいたノウハウで対応いたします。

関連法人との溶接連携

ガンドリル加工やBTA加工は、製品完成までの「一工程」に過ぎない場合がほとんどです。当社は単なる「穴あけ屋」に留まらず、バリューチェーン全体を最適化するソリューションを提供しています。

関連法人のご紹介

代表の乙間が兼務する関連法人「株式会社無双」(特殊溶接・製缶・板金加工)との強力な連携により、以下のような複合案件を図面1枚で完結させることが可能です。

  • 長尺シャフトへのガンドリル加工 + フランジ部分の特殊溶接(アッセンブリ)
  • 材料手配 〜 深穴加工 〜 CNC旋盤 〜 最終仕上げまでの完全一貫生産

別々の業者に発注する手間、図面を二度引く労力、そして無駄な輸送コストとリードタイムを劇的に削減します。

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加工サンプル

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ガンドリル加工・BTA加工サンプルの一例です。保守契約の関係上、プレート材(板材)や特殊形状物へのガンドリル・BTA加工などはお見せできないものが多数あります。

設備紹介

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当社で扱っている、ガンドリル加工・BTA加工のための機械設備をご紹介します。協力会社とのネットワークにより、図面一枚であらゆる加工に対応しております。

会社概要

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深穴加工を中心として各種金属・非鉄金属だけにとどまらず樹脂加工などあらゆる加工を手がけて、社会への貢献につながってゆくことを目指しております。