金属コラム【ステンレス】
「ステンレス」は、英語で「stainless steel」と表記しますが、「汚れ(stain ステイン)がない(レス)」という意味の言葉で、錆びにくいという特性をあらわしています。ステンレスは、含有するクロムが空気中で酸素と結合し、表面に不動態皮膜を形成して、表面を保護することで錆から守ります。ステンレスは耐食性や強度を向上させるために、主成分である鉄(Fe)にクロム(Cr)やニッケル(Ni)を混ぜることで作られる「合金」にあたる、発明から100年ほどしか経っていない新しい金属です。SUSと明記します。
ステンレスの特徴
ステンレス鋼(ステンレススチール)は、腐食に強く、メンテナンスが少ない、非常に多用途な合金です。
耐食性
ステンレス鋼は、主にクロム(通常は10%以上)を含むことで、高い耐食性を持ちます。クロムは酸化して表面に薄い不動態酸化膜を形成し、腐食を防ぎます。これにより、湿気や化学薬品、酸、アルカリ、塩水などに対する耐性が向上します。
強度と耐久性
ステンレス鋼は、他の多くの材料に比べて高い強度と耐久性を持ちます。特に、オーステナイト系ステンレス鋼は、優れた強度と靭性を持ち、高温環境でも安定した性能を発揮します。
衛生性
ステンレス鋼は、表面が滑らかで非多孔性のため、細菌やその他の微生物が付着しにくく、清潔に保ちやすいです。このため、食品加工、医療、厨房機器などの分野で広く使用されています。
代表的なステンレスとその用途
オーステナイト系ステンレス
オーステナイト系ステンレス鋼は、ステンレス鋼の一種であり、その主な特徴は高い耐食性と優れた成形性です。
オーステナイト系ステンレスの特徴
高耐食性
オーステナイト系ステンレス鋼はクロム(16-26%)とニッケル(6-22%)を多く含んでおり、非常に優れた耐食性を持ちます。また、モリブデンを添加することで、さらに耐食性を向上させることができます
非磁性
通常の状態では非磁性ですが、冷間加工によってわずかに磁性を持つことがあります。完全な非磁性が求められる場合は注意が必要です。
優れた成形性と溶接性
オーステナイト系ステンレス鋼は、他のステンレス鋼と比べて成形性と溶接性が非常に優れています。このため、複雑な形状の部品や薄板加工に適しています。
広い温度範囲での使用
高温でも低温でも安定した特性を保つため、極端な温度環境でも使用することができます。例えば、高温環境下での耐酸化性が高く、低温でも脆性が少ないです。
優れた機械的特性
オーステナイト系ステンレス鋼は、強度と延性のバランスが良く、幅広い工業用途に適しています。高温強度や耐疲労性も優れています。
オーステナイト系ステンレスの種類
SUS304
SUS304は、金属加工でよく使われるよく使われる材質です。成分はクロムとニッケルが含まれており、いわゆるステンレスに分類されます。ステンレスというと多くの方はイメージしやすいと思いますが、銀色の金属でスプーンやナイフ、キッチンのシンクなど厨房機器周辺に使われることが多いです。
SUS304の特徴 |
SUS304はステンレスに含まれており、厨房機器周辺に使われることが多いです。その理由として挙げられるのは、SUS304の金属配合にクロムやニッケルなどが使われているからです。クロムやニッケルなどは、錆びに強い性質を持っているため、よく水回り製品に使われることが多いです。このSUS304はSUSの他番号シリーズのなかでも、金属加工で最も使われており、全体の生産量の60%を占め使用頻度が高いオーステナイト系ステンレスです。 |
SUS309
SUS309は加工性がやや劣ります。しかしその反面、耐熱性と耐食性強い傾向にあります。この耐熱性の特性から、燃焼器具や排ガス部品、治具など高温用途に使われる製品によく使われます。SUS309の耐熱性が高い理由は、クロムとニッケルです。クロムは酸化膜を形成し、高温下でも持続的に保護層として機能します。またニッケルは高温での強度と耐酸化性が向上し、ニッケルとクロムの相乗効果により、耐熱性が増します。
SUS309の特徴 |
SUS309は、金属加工でよく使われるよく使われる材質です。成分はクロム(Cr)やニッケル(Ni)、炭素量(C)をが含まれており、オーステナイト系ステンレス鋼です。ステンレスというと多くの方はイメージしやすいと思いますが、銀色の金属でスプーンやナイフ、キッチンのシンクなど厨房機器周辺に使われることが多いです。 |
オーステナイト系ステンレスの使用例
- 食品加工設備
- 耐食性と衛生性が高いため、食品加工や調理機器に広く使用されています。例えば、シンク、調理台、厨房機器など。
- 医療機器
- 衛生性と耐食性が求められるため、手術器具や医療用具に使用されます。
- 化学工業
- 耐食性が高いため、化学プラントや石油化学設備、パイプラインなどに使用されます。
- 建築材
- 見た目の美しさと耐久性から、建築物の外装材や内装材に使用されます。例えば、エレベーターのパネルや建物のファサードなど。
- 自動車部品
- 耐久性と加工性の良さから、排気系部品や装飾部品に使用されます。
マルテンサイト系ステンレス
マルテンサイト系ステンレス鋼は、鉄にクロムを加えたステンレス鋼の一種で、主に耐食性と高強度を特徴としています。
マルテンサイト系ステンレスの特徴
高強度と硬度
マルテンサイト系ステンレス鋼は熱処理によって高強度と高硬度を得ることができます。この特性により、機械部品や工具、刃物などの高耐久性が求められる用途に適しています。
耐摩耗性
高硬度のため、摩耗に対する耐性が強く、長寿命の部品製造に適しています。これは特に切削工具やナイフなどで重要な特性です。
耐食性
他のステンレス鋼に比べると耐食性はやや劣りますが、クロムの添加により一定の耐食性を有しています。特に、低温や中程度の腐食環境では十分な耐食性を発揮します。
磁性
マルテンサイト系ステンレス鋼は磁性を持つため、磁気を利用する機械や装置の部品として使用されることがあります。
加工性
熱処理前の状態では比較的加工しやすい特性を持っていますが、熱処理後は硬度が増すため加工が難しくなります。このため、必要な形状に加工した後で熱処理を行うことが一般的です。
マルテンサイト系ステンレスの種類
SUS403
SUS403は、マルテンサイト系ステンレス鋼のクロムを含んでおり、一般的な環境下での腐食に対して耐性があります。また熱処理により高い強度と硬度を得ることができます。特に、焼入れ・焼戻し処理によって、機械的性質が向上します。
SUS403の特徴 |
SUS403は、ガンドリル加工やBTA加工でもよく使われる材質です。成分は炭素(C)やマンガン(Mn)、ケイ素(Si)やリン(P)、硫黄(S)やクロム(Cr)が含まれており、マルテンサイト系のステンレス鋼に含まれます。ステンレス鋼というと多くの方はイメージしやすいと思いますが、タービン部品やボルト/ナット、ポンプ部品、ナイフや刃物に使われることが多いです。 |
SUS410
一般的なマルテンサイト系ステンレス鋼で、バランスの取れた強度と耐食性を持つ。
SUS420
硬度を高めるために熱処理され、刃物や工具に使用される。
SUS440
最も硬度が高く、耐摩耗性に優れる。高強度の刃物やベアリングに使用される。
オーステナイト系ステンレスの使用例
- 刃物
- 高硬度と耐摩耗性を活かしてナイフやハサミなどに使用されます。
- 工具
- ドリルやタップなどの高耐久性が求められる工具。
- 機械部品
- 高強度を必要とするシャフトやギアなど。
- 医療機器
- 一部の手術器具や歯科用インプラント。
フェライト系ステンレス
フェライト系ステンレス鋼は、ステンレス鋼の一種であり、主にクロムを多く含む鉄基の合金です。このタイプのステンレス鋼は、鉄の結晶構造であるフェライト構造を持ち、特定の特性を備えています。
フェライト系ステンレスの特徴
優れた耐食性
フェライト系ステンレス鋼は、高いクロム含有量(通常は10.5〜30%)により、特に酸化性環境下で優れた耐食性を示します。塩水や化学薬品に対する耐性が高く、食品加工や化学工業に適しています。
磁性
フェライト系ステンレス鋼は磁性を持つため、磁気を利用する製品や機械部品に適しています。例えば、電磁弁やその他の電気機器の部品に使用されます
良好な熱伝導性
このタイプのステンレス鋼は、他のステンレス鋼と比べて熱伝導性が良いため、熱交換器や調理器具などに使用されます 。
低熱膨張
フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて熱膨張係数が低く、温度変化による寸法変化が少ないため、寸法安定性が求められる用途に適しています 。
コスト効率
フェライト系ステンレス鋼は、ニッケル含有量が少ないため、他のステンレス鋼に比べてコストが低く抑えられることが多いです 。
優れた耐応力腐食割れ性
高温や高湿度下でも、応力腐食割れに対する耐性が高いため、過酷な環境下での使用が可能です 。
フェライト系ステンレスの種類
430ステンレス鋼
最も一般的なフェライト系ステンレス鋼で、家庭用品や自動車部品に広く使用されます。
409ステンレス鋼
耐熱性が求められる自動車の排気系部品に使用されます。
446ステンレス鋼
非常に高い耐酸化性と耐熱性を持ち、産業用ヒーターや炉の部品に適しています。
フェライト系ステンレスの使用例
- 家庭用品
- 調理器具、シンク、キッチン家電など、耐食性と熱伝導性が求められる製品に使用されます。
- 自動車部品
- 排気系部品、マフラー、ヒートシールドなどに使用されます。
- 建築材料
- 屋外の構造物、建築パネル、屋根材などに適しています。
- 産業用機器
- 熱交換器、化学処理装置、食品加工設備など、耐食性と耐熱性が必要な場面で利用されます。
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレス
オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(二相系ステンレス鋼)は、オーステナイトとフェライトの両方の構造を持つステンレス鋼です。この組み合わせにより、他のステンレス鋼のタイプと比べていくつかの特性が向上しています。
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレスの特徴
優れた耐食性
二相系ステンレス鋼は、オーステナイトとフェライトの相を混在させることで、高強度と優れた耐食性を両立しています。特に、応力腐食割れ(SCC)に対する耐性が高く、塩水や塩化物環境でも腐食しにくいです 。
磁性
フェライト系ステンレス鋼は磁性を持つため、磁気を利用する製品や機械部品に適しています。例えば、電磁弁やその他の電気機器の部品に使用されます
優れた機械的特性
高い強度と延性、優れた疲労強度を持ち、低温および高温環境下でも安定した性能を発揮します。これにより、過酷な環境での使用に適しています。
良好な加工性と溶接性
二相系ステンレス鋼は、オーステナイト系とフェライト系のバランスにより、適度な成形性と溶接性を有しています。溶接後の性能低下が少なく、溶接部の強度や耐食性も高いです
低熱膨張率
フェライト相の影響により、熱膨張率が低く、温度変化による寸法変化が少ないため、精密部品に適しています。
磁性
二相系ステンレス鋼はフェライト相を含むため、磁性を持ちますが、磁性の程度はフェライト系ステンレス鋼ほど高くありません。
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレスの種類
2205ステンレス鋼
最も広く使用される二相系ステンレス鋼で、優れた強度と耐食性を持ち、様々な産業で使用されています。
2507スーパー二相系ステンレス鋼
さらに高い耐食性と強度を持ち、過酷な環境での使用に適しています。
オーステナイト・フェライト系(二相系)ステンレスの使用例
- 海洋構造物
- 高い耐食性と強度を持つため、海洋環境や海水にさらされる構造物に適しています。例えば、海洋プラットフォームや船舶部品など
- 化学処理装置
- 塩化物環境や酸、アルカリに対する耐性が高いため、化学工場や石油化学設備で広く使用されます。
- 石油・ガス産業
- 耐食性と高強度が求められる石油リグ、パイプライン、熱交換器などに使用されます。
- 紙パルプ産業
- 熱腐食性の高い化学薬品にさらされるため、耐薬品性が重要な製造装置や機械部品に使用されます 。
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